2011-05-27

裸のラリーズ:黒い悲しみのロマンセ

ガルシア・ロルカ「ジプシー歌集」より 「黒い悲しみのロマンセ」

  黒い悲しみのロマンセ
雄鶏どものくちばしが
夜明けをもとめて地面を掘る
そのころ暗い山から
ソレダー・モントーヤが下りてくる
真鍮の彼女の肉体は
馬と影のにおいを放つ
すすけた金床の胸が
無遠慮な歌をうなる
ーーーソレダー、つれもなしに、こんな時刻に
お前は誰をたずねてる?
わたしが誰をたずねているとたずねたところで、
ねえ、それがお前さんに何だというのさ?
わたしは、探したいものを求めて来たのさ、
わたしの喜びとわたしという人間を。
ーーーおれの悲しみのソレダーよ、
くつわを外された馬は
やがて海を見つけだす、
すると海の波に呑まれてしまうのだ。
ーーー海のことを思い出させないでおくれ、
オリーブの生える土地では
オリーブの葉のさざめきの下で
黒い悲しみが湧き出すのだから。
ーーーソレダーよ、そなたは何という大きな悲しみを、
抱いているんだろう!
お前の涙はレモンの汁、
のぞみにも、口にもすっぱいレモンの汁。
ーーー何と大きな悲しみだろう!
まるで狂女のように家のなかを、
二つのおさげを床にたらして
台所から寝室へわたしはかけまわる。
ひどい悲しみ!からだも衣服も
わたしはまっ黒になって行く。
悲しや、わたしの木綿の肌着!
悲しや、わたしのひなげしの腿!
ーーーソレダーよ、ひばりの水で
からだを清め、心も安らかに
持つがよい、ソレダー・モントーヤ。

はるか下の方で川が歌う
川は空と木の葉のすそ飾り。
新しい光は
南瓜の花の冠を戴く。
おお、ジプシーたちの悲しみよ!
清らかな、いつも孤独の悲しみ。
おお、隠れた河床と
はるかな夜明けの悲
しみよ!

Federico Garcia Lorcaの作品は平凡社他から和訳がいくつか出ているが、水谷が読んだのは
ジプシー歌集 / Federico Garcia Lorca著 東京 : 平凡社, 1969 (世界名詩集 ; 26)
・・・だと思
われる。

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